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2013-02-28

地味ですが

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「季節の養生ランチコース」は勿論、「ヒヨコマメのカレーランチ」にもセットでつけている、つまり藍布でお食事のお客様はもれなく口にすることになる、薬膳スープ。

半透明の茶色がかった液体に、ネギが浮いているだけの、極めて地味ーーなヴィジュアルです。

が、実は仕込みに一番時間がかかるのがコレ。

ベースのスープは鶏です。
ニワトリさんの、脚じゃなくて足、俗に言う「モミジ」ですな、アレをじっくりゆっくり煮込んで、ダシをとります。
そこに、季節にあわせた生薬を数種加えています。

と、まあ、書くとこれだけなんですが。

きたまちで店を開く前、不定期に「いちにち藍布」という薬膳ディナーのイベントを重ね、その中でもこのテのスープは何度も出してきましたし、おおむね好評ではあったのですが、それでも、出来るだけ飲みやすい味に仕上げてはいるものの、漢方薬に馴染みのない方にとってはあまり美味しくないかも、と開店当初は少し心配でもありました。
が、多くの方から「漢方っぽい香りはするけど、全然飲みにくくない。普通に美味しい。」「特にどうという味じゃないのに、なんだか身体に染みわたる~。」というお声を戴いて、少し安心。

漢方薬というものが元々は煎じ薬であるように、素材の滋養分を余すところなく煮出した「スープ」というものは、それ自体が優れた薬効を持ちます。
何しろ、赤ちゃんから高齢者、病人まで誰でも口にすることが出来る。
お腹に負担をかけることなく栄養を消化吸収できる調理法なのです。
そう言えば、料理研究家にして名エッセイストでもある辰巳芳子大センセー(別に、らんぷ店主が辰巳センセーに弟子入りしてた訳じゃないけど)も、「命のスープ」について度々語っておられますね。

大陸に限らず香港や台湾など、チャイニーズの文化圏に行けばたいてい薬膳スープ専門店があって、ごく気軽にランチ出来たりします。
特に広東省や香港のひと達はスープ好きだそうで、香港の街なかのカフェで食べるランチセットにさりげなーくついている例湯(らいとん:本日のスープ)なんか、まさに季節に合わせた薬膳食材が入ってたりします。
夏なら冬瓜、秋の初め頃なら杏仁、という風に。
家庭でも、お母さんは家族の体調や季節のことを考えて、それにあわせたスープを煮込みます。
ベトナムにも、シンガポールにも、鶏あるいはブタの骨付き肉と生薬を煮込んだスープがあります。

そんなこんなもあって、アジアの薬膳ランチを考え始めた当初から「スープはマストアイテム」と決めていました。
最初は、食べられる具も入れようかと思ったりしましたが、やっぱりスープ自体をシンプルに味わっていただくのが最良と考えて、現状の、アイソのないスタイルになっております。
因みに香港とか台湾では、モミジならモミジ、豚骨なら豚骨とダシの現物がそのまんまゴロンと入ってます。それ、やっぱイヤでしょー?(笑)

そんな訳で、メインやデザートをお褒めいただくのと嬉しいのは勿論ですが、時折、「スープが、沁み込むような感じで、身体で欲してるみたいな感じでした」などと過分なお言葉を頂戴したりすると、ブタもおだてりゃ木に登る~~♪、ってな心境のらんぷ店主でした。

ただ、時々ふと気になるのは、現在の薬膳スープはわりと「気血を補う」をテーマに作っているので、それがそんなに美味しいと感じていただけるのは、もしかしたらその方の心身が意外にお疲れなのかもしれません。

藍布のスープが「普通に旨い」なら、作り手として素直に嬉しいことです。
でももし、上記のように「身体に沁みこむ」みたいに感じたら、ご自分の身体に「いつも頑張ってくれてありがとう」といって(←これ、結構効きます)、少しゆっくりする時間をどうぞお作り下さい。



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プロフィール

らんぷ店主

Author:らんぷ店主
アジアのお母さんの味に東洋医学のエスプリを混ぜた、アジア薬膳料理屋を奈良きたまちの古民家で展開。
「あじあの薬膳おばんざい 藍布(らんぷ)」
火曜・水曜定休
奈良市法蓮町1232
℡ 0742-27-1027

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