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2011-11-16

思い出のチャジャンミョン・後編

3.jpg

これが、チャジャンミョンです。
ソウルの中華料理屋さんで撮った写真(当時はフィルムカメラ使ってました)を携帯のカメラで撮りなおして画像にしました。
なんかちょっとキュウリの上に光が入っていますが気にしないでね。

日本の中華もたいがい「現地化」されていますが、韓国の「中華」もやはりその国ならではの変化を遂げているようです。
中でもチャジャンミョンは現代韓国人なら子供の頃からしょっちゅう食べなれていて、留学などで外国暮らしが長くなると必ず懐かしくなる郷愁そそる味、なのだそうです。
初渡韓を前にそんな雑知識を仕入れ、また当時、藍布のアルバイトスタッフに韓国からの留学生もいたので注文の仕方など色々教えて貰って、いざ現地へ。

初めての韓国・初めてのソウルは一人旅で、知人を介して知り合った日本留学歴のある女性に2度ほど街歩きに同行してもらった他は、ほぼ単独行動でした。
何故か雨の日が多く、この日も小雨が降ったりやんだりのどんよりした曇り空の中、話に聞いていたソウル市内の中華料理屋が点在していると言うエリアへ足を運び、それらしき店の扉をちょっと勇気を振り絞って開けてみました(因みに韓国の地元の食堂・レストランと言うのは外から中が全く見えなかったり、メニュウも写真無しでハングル文字のみ羅列、という極めて愛想無しな店構えのところが多いのです)。
店内は外から想像するより明るく、数卓あるテーブルのうちひとつにおっちゃんのグループが陣取っている他は空いていました。
おっちゃんたちと気安げにしゃべっていた女性が「アンニョンハセヨ~」と振向いたので、バイトスタッフY君に言われたとおりの韓国語棒読みでオーダーすると通じたようで、女性が見せの奥にあるらしきキッチンに声をかけ、ほどなく目の前に写真の料理が運ばれてきました。

さて、肝腎のお味は。
辛くないとは聞いていたし、また目の前の八丁味噌というより中国の甜面醤(甘味噌)のような黒光りソースに、そこそこのコクと甘味を期待して口に入れたのですが…。

何の味かよく判らない…と言うか、なんか、締りがない…。
Y君は「ソース焼きそばみたいな味」と言ってたけど、しいて言えば「味の足りないソース焼きそば味」…。
辛味も甘味も塩分も薄いような。

これが、らんぷ店主の第一印象でした。
付け合せのタクアンと、豆皿に入っていた甜面醤(写真右上)が、ようやく味のアクセントになると言う状態。

ふ~~~ん、これが韓国人なら誰もが懐かしがる味かあ。
確かに他の国行ったらなかなか食べられないかも…。

と、それでも決して「まずい」ワケではないので、むぐむぐと半分ぐらい平らげながらふと気付くと、調理がすんでヒマになったらしく店の主人と思しき男性がキッチンから出てきて、おっちゃんグループと談笑している。
やっぱ常連さんかなにかかな。

…あれ?あれれ??

とさらにふと気付いたのは、彼らの会話。
断片的ながら、聞き取れるのです。
いつの間に我が韓国語ヒアリング能力が千倍アップ?!

…あー。
中国語やん。
おっちゃんたちも、店のおやっさんも。

改めて(でもさり気なーく)おっちゃんたちのテーブルに神経を集中させると、どうも向こうもこちらを気にしている様子。
日本では「おひとりさま」と言う言葉もはやり始めた頃だったけど、女性一人で外食って韓国では普通、有りえないって聞いてたし(女性ならずとも、一人でご飯を食べるのは「かわいそうなひと」と見られるらしいです。余計なお世話と思いますが)、それでかなあ、と。

なんとなくビミョウな空気が漂ったそのとき、店の親父さんがらんぷ店主を見て口を開きました。
「ハングクサラム(韓国人)?…ニホンジン?」

一瞬ここで、付け焼刃韓国語でさらりと「イルボンサラミエヨ(日本人です)」と言ってみたくもあったのですが、後が続かないことは判っていたのと、おっちゃんたちもこちらを見ているので、よっしゃここは皆まとめて面倒見たろやないか(見られへんけど)、と安全路線をとりました。
中国語で「日本人です。日本から旅行で来ました。」

言ったこちらがビックリするぐらいおっちゃんたちは驚いたようで、一斉射撃。
曰く、あんた中国語しゃべれんのんかどこで習ったんや中国留学してたんかうんぬんかんぬん…、と、どう収集つけようかと思った頃にやおら親父さんが口を開き、

「私もね、日本にいましたよ。1973年から、名古屋にね。」

らんぷ店主の中国語なんかよりずうっと上等な日本語でした。
おいおい、はよ言うてよソレ。

70年代から10年ほど日本にいたそうです。
で、こう尋ねられました。
「最初、店に入ってきたとき、サムソンチャジャンミョンて言ったでしょう。あれ、どうしてですか?」と。

そうです。
留学生Y君の事前講習で「チャジャンミョンにはサムソンチャジャンミョンとカンチャジャンミョンがあります。ソウル行ったら絶対、サムソンチャジャンミョン食べてください。」と念を押され、ちゃーんと正しいハングルのメモも携えてきたのです。
店に入ってお姉さんにらんぷ店主が言ったのは「サムソンチャジャンミョン、イッソヨ?」でした。
(イッソヨ、だと「あります」の意味。日本語同様、語尾をくいっと上げると「あります?」のニュアンスになる。覚えておくと大変便利)

「ソウルに来る前、韓国人の友人に教えられたんです。サムソンチャジャンミョン選ぶようにって。」と答えると親父さんは、ああそれで、と納得したような顔つき。
なーんだ、おひとりさまってだけじゃなく、オーダーの時点で注意喚起されてたのね。

おっちゃんグループは口々に「ほんとに留学したことないの?あんたの発音は外国人ぽくないね。中国で勉強したみたいだ」と高評価してくれるので、正直に「あ、でも皆さんの言っていること聞き取れないことの方が多いですよ」というと、こともなげに「そりゃわしら、山東省の人間だからね。山東なまりだからね。」と。
(らんぷ店主は、中国語の発音「だけ」はお褒めに預かることが多いです。これであと語彙力とヒアリング能力があればなあといつも他人事のように思うのですが)
「ほんとに日本人?」となおも言われるので「じゃあ何人に見えますか?」とおっちゃんたちに返したら、ヨコから親父さんが「うーん、キョボみたいだね。そういう顔立ちのひと、いますよ」と。
僑胞(キョボ)。韓国に住む韓国人から見た、在日韓国・朝鮮人のことです。
へえ、在韓中国人にそんな風に見られるとは面白い、と思ったものです。


特に何か深い話をしたわけではありません。
でもそれまでの数日間、単独行動だったのと言葉のレベルの問題で、店で「これください」ホテルで「部屋の鍵ください」で一日終えることも多い状況だったので、何か久しぶりに言葉のキャッチボールをした気分で、お腹も気持ちも満足して、その店を出たことを覚えています。

チャジャンミョンの味わいについては、うーむ、こういうメリハリのない食べ物も韓国人は好きなのね、という感じでしたが。

予想外に長くなってしまいましたが、こんな経緯で、らんぷ店主にとっても「思い出の味」とも言えるのかもしれません。












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プロフィール

らんぷ店主

Author:らんぷ店主
アジアのお母さんの味に東洋医学のエスプリを混ぜた、アジア薬膳料理屋を奈良きたまちの古民家で展開。
「あじあの薬膳おばんざい 藍布(らんぷ)」
火曜・水曜定休
奈良市法蓮町1232
℡ 0742-27-1027

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